【特設ページ】なぜ今回の新火器追加が問題なのか (論点整理)

このページは、ローカルネット大分・日出生台で作成した4ページリーフ「日出生台演習場 米海兵隊・防衛省が要求する新たな追加兵器=『対装甲車両火器』の訓練は許されない!PDF」のウェブ版です。現在の日出生台での新火器追加問題をこれまでの経緯、意味、論点を整理してまとめたものです(このページでは、リーフの限られた紙面では収めきれなかった図・グラフ・写真などを挿入しています)

リーフ「『対装甲車両火器』の訓練は許されない!」サムネイル

【このページの内容】
1. 追加火器問題の経過
2. 負担軽減のトリック
3.同質・同量が根本問題
4. 県道を封鎖しての実弾砲撃訓練
5. 「一体」というマジナイ言葉
6. 米軍が目論むのは無制限の訓練
7. なし崩し的に同質・同量の合意を反故にする米海兵隊
8. 関連資料・声明・意見書・質問書

 

「日出生台演習場 米海兵隊・防衛省が要求する新たな追加兵器=『対装甲車両火器』の訓練は許されない!


1.【追加火器問題の経過】

2025年12月23日防衛局が米軍の対装甲車両火器追加の意向を通知

九州防衛局は昨年の押し詰まった12 月23 日に、突然大分県をはじめとする日出生台演習場問題協議会(以下四者協)に在沖縄の米海兵隊による日出生台演習場での移転実弾射撃訓練(以下104 移転訓練)で、新たな火器(迫撃砲、ロケットランチャーなど「対装甲車両火器」)を追加使用したいとの意向を伝えた。(図1)これに対して四者協は訓練の縮小・廃止を望んでいることを改めて伝え、具体的な負担軽減措置を要望したうえで住民説明会を求めたという。負担軽減について九州防衛局は検討して改めて説明に伺うということであった。

本年4 月21 日、奇しくも日出生台演習場で自衛官4 人の痛ましい死傷事故が起きた日に、九州防衛局は由布市湯布院町を訪れ四者協に従来から使われている155 ㎜りゅう弾砲と新たに計画されている対装甲車両火器を同時に撃たないことを条件に改めて認めるよう申し入れしたという。県をはじめとする四者協は現時点で受け入れは決定していない。他県の状況を確認したうえで判断したいと話したという。

2. 【負担軽減のトリック】

四者協は新たな火器の追加訓練は「何らかの負担軽減策が示されなければ受け入れは難しい」と表明している。防衛省は四者協を懐柔しようとして「①全体の訓練日数は変更しない。②従来の155 ミリ榴弾砲と追加兵器の訓練は同時に行わない(追加兵器の訓練日だけ榴弾砲の訓練日が減る)③追加兵器の砲撃音はりゅう弾砲に比べ小さい(約1/2)④だから全体としては騒音が減少する⑤従って周辺住民の負担軽減になるとの理屈を作り四者協の説得にかかっている。この理屈は機関銃などの小火器導入の際にも用いられた。

負担軽減のトリック表

防衛省資料「104 移転訓練における砲陣地防御訓練で使用する火器の見直しについて」(注)では榴弾砲のある地点の最大音量71.2dbに対し迫撃砲は35.4dbだから迫撃砲の音量は榴弾砲の半分しかないと印象付けようとしている。しかし、同資料にある別の地点の測定では榴弾砲28.8dbに対して迫撃砲42.0dbとなっており、むしろ迫撃砲の方が音量は大きい。防衛省は一部の数値を引き合いにして迫撃砲の音量は榴弾砲の二分の一だと印象付けようとしている。同資料には「騒音の影響については、地形や気象条件などによっても変化するため一概に述べることは困難です」と書かれている。防衛省の出した数値は全くあてにならないことを同省自ら証明しているようなものだ。

注意しなければならないのは、音が大きいとされる榴弾砲の訓練日数を減らして、音がより小さいとされる迫撃砲などの訓練日に充てても、榴弾砲の発射密度を増やせば全体としての大音量はむしろ増加することになる。小火器導入後に榴弾砲の砲撃数が増えたことがそれを物語っている。(図3)

小火器追加後の榴弾砲砲撃数はむしろ増えた(棒線グラフ)
104「砲撃」訓練と104「移転」訓練の違い

3.【同質・同量が根本問題】

この件の根本的な問題は防衛省が「負担軽減」の論拠にしたい砲撃音の強弱の問題ではない。根本的問題は迫撃砲やロケットランチャーなどの新たな兵器を米海兵隊が日出生台での移転訓練で使うことが、当初の日米の合意であった「同質・同量」の訓練に反するか否かということのはずだ。当初の合意は155 ミリ榴弾砲の訓練のみであったのだから、新たな兵器の追加はその合意に反しており受け入れることはできない。きわめて単純なことなのだ。それにもかかわらず米軍と防衛省はそこから人の目をそらせるために「一体」という抽象的な言葉をもてあそんだり、騒音問題に焦点をそらしたりしている。問題の「同質・同量」について語る前に、沖縄駐留の米海兵隊砲撃部隊が日出生台で訓練を始めた経緯を押さえておこう。

4.【県道を封鎖しての実弾砲撃訓練】

沖縄の施政権が返還された1972 年の翌73 年4月から米海兵隊キャンプ・ハンセンの訓練区域で県道104 号線を封鎖して榴弾砲の実弾射撃訓練(以下104砲撃訓練)が開始された。県道沿いに恩納村喜武原んばるの集落がある。生活道路を封鎖しての訓練には地元はもとより沖縄の人々の激しい抗議と抵抗運動を引き起こした。訓練は1997年3月まで続いた。

沖縄キャンプハンセンで行われていた県道104号線越え実弾砲撃演習

【SACO合意と本土移転訓練】

1995 年米海兵隊員3 人による痛ましい少女暴行事件が起きた。長年の沖縄県民の怒りは頂点に達し、反基地・基地撤去運動が強まった。これに衝撃を受けた日米政府は県民の怒りを鎮めるため普天間基地の返還、104 砲撃訓練の本土5 ヶ所(北海道矢臼別、宮城県王城寺原、静岡県東富士、山梨県北富士、大分県日出生台)の演習場への分散移転などを含むSACO最終報告を1996 年にまとめた。最終報告による合意は沖縄の基地負担の軽減のためという目的だったはずだが、実際には今日に至るまで基地負担はほとんど軽減されていない。

【同質・同量とは】

本土への移転後の訓練は、沖縄での訓練と「同質・同量」であると1996 年の日米合同委員会で合意されている。ここでいう「同質」とは、使用する火砲・弾種・訓練形態が同一であることを意味し、「同量」とは、回数や規模が同程度であることを意味する。当時の104 砲撃訓練は榴弾砲による訓練であり、それ以外の火器を含むものではなかった。

キャンプ・ハンセンでは榴弾砲以外の機関銃などの小火器や迫撃砲、ロケットランチャーなどの訓練が1997年以前も行われていた。しかし、それらの訓練は榴弾砲の104 砲撃訓練とは全く別の訓練として実施されてきた。これについては104 砲撃訓練に関する記録や訓練現場を熟知する現地の人の証言からも裏付けられている。

5.【「一体」というマジナイ言葉】

2025 年12 月の防衛省資料には次のように書かれている。

「米側からは…『155 ㎜榴弾砲による実弾射撃訓練』と同時期に、『対人小火器及び対装甲車両火器による砲陣地防御訓練』を一体のものとして実施しており、これらの訓練は、1996 年の日米合同委員会合意にいう『同質・同量』であるとの説明を受けています。」

この資料には「一体」という表現が何度も出てくる。前述のとおり実際は榴弾砲と「対装甲車両火器」などによる訓練は個々別々に行われていて、それぞれの練度を向上させることを目的としていた。言葉で「一体」と何度も言ったところで現実が「一体」となるわけではない。このような客観的事実に基づかない「一体」の訓練を「同質・同量」の根拠にすることは道理に背くことになる。また、この資料の図表には迫撃砲の実弾射撃訓練が県道104 号線越えで行われていたかのように描かれているが、迫撃砲による県道越え訓練の事実はない。このように言葉と図表のトリックで人々を欺き愚弄する米軍と防衛省の欺瞞は許されない。

防衛省の配布資料:移転前のキャンプハンセンで米軍演習配置図

104 移転訓練が本土の演習場で開始されて30年近くになる。それほど長きにわたり榴弾砲の単独訓練を続けていながら、いまさらのように「一体のもの」として「対装甲車両火器」の訓練が必要と言っても全く説得力がない。確かに実際の戦闘行為や戦争は複数の兵器を統合的かつ一体的に運用することで成りたっている。「一体」という言葉を都合よく使えば戦争に投入するどのような兵器でも訓練に持ち込めることなり、歯止めはなくなってしまう。「矢でも鉄砲でも」どころか戦車でも戦闘機でも使える理屈に繋がる。「一体」という言葉は「同質・同量」の合意を消し去る魔法のマジナイ言葉ではないはずだ。

6.【米軍が目論むのは無制限の訓練】

沖縄駐留米海兵隊の砲兵大隊は近年榴弾砲運用を縮小してハイマースなどのミサイル・ロケットの運用にシフトしてきた。米海兵隊は重要度が低くなった榴弾砲よりもその他の訓練を広い本土の演習場でやりたいのが本音と思われる。今回新たな追加兵器を受け入れてしまえば、米海兵隊が移転訓練において、次々と新たな兵器の訓練を日出生台でするための突破口となってしまう。十数年前に機関銃などの小火器の追加を許した経緯はあるが、今回の「対装甲車両火器」の追加とは重みが全く異なる。米海兵隊の狙いは本土の演習場で無制限に訓練をすることにある。

東富士演習場での2025年10月のHIMARS実弾射撃訓練

最近の東富士演習場でのHIMARSハイマースの実射訓練のなし崩し継続がそれを如実に語っている。海兵隊は日出生台に2022年からハイマースを持ち込んでいる。通信のために使用していて、発射訓練はしないと言っているが、「対装甲車両火器」の訓練を許せばそれを口実になし崩し的にハイマースのロケット実射訓練が開始される恐れはある。私たちを待ち受けているのは、騒音の減少による負担の削減どころか、訓練の拡大強化で地元への負担がより大きくなることはたやすく予想できる。防衛省は騒音減少による負担軽減という欺瞞的トリックをやめるべきだ。

7.【なし崩し的に同質・同量の合意を反故にする米海兵隊】

米海兵隊は今日まで「同質・同量」の合意をなし崩し的に反故にする行為を繰り返してきた。

同質の反故

●104 砲撃訓練で使ってなかった白燐弾や照明弾を本土では使っている。

●104 砲撃訓練で使ってなかった機関銃などの小火器を本土では使いだした。

同量の反故

●2020年12月31日の琉球新報の記事によれば本土では「訓練1回当たりの発射

弾数が4・1倍、年平均の発射弾数が2倍に増えている」

●104 砲撃訓練では行われなかった夜間訓練が本土では実施されている(同質にも関係)

そして明らかに「同質・同量」に反する今回の「対装甲車両火器」訓練である。

【防衛省は要求を撤回せよ】

米海兵隊は日出生台で2027年1月~3月に予定されている第17回目の104移転訓練で「対装甲車両火器」の追加訓練を目論んでいる。私たちは新たな兵器の追加訓練に断固として反対する。四者協は「同質・同量」の訓練という原則を再確認して「対装甲車両火器」という新たな兵器の追加訓練を絶対に受け入れてはならない。米軍及び米軍の下請け機関に成り下がっている防衛省は本計画を直ちに撤回すべきである。

(注)大分県HPhttps://www.pref.oita.jp/soshiki/13582/104

関連資料(PDF)

リーフ「日出生台演習場 米海兵隊・防衛省が要求する新たな追加兵器=『対装甲車両火器』の訓練は許されない!」PDF

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最終更新日: 2026年05月13日